読書日記 nokia's bookshelf

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がんの再発は人為的!?『がん消滅の罠 完全寛解の謎』岩木一麻

こんばんは。 春はすぐそこまでやってきているのに肌寒い日が続きますね。

いかがお過ごしですか?

以前『がん消滅の罠 完全寛解の謎』岩木一麻 著 を読んでいることを書きました。 nokia163.hateblo.jp

 

 

 『がん消滅の罠〜完全寛解の謎』岩木一馬

その後早い時点で読み終えていたのですが、なかなか感想をお伝えすることができませんでした。

リンパ浮腫情報サイト「わがままリンフィ」の開設に向けて時間を取られていたこともあるのですが、それ以上に、がん患者の読者さまへどんなふうにお伝えすればいいのか考えがまとまらなかったのです。

 

結論から申し上げます。 nokiaとしてはこの作品、『がん消滅の罠 完全寛解の謎』岩木一麻 著は、現在がんの治療をされている方、経過観察中の方にはオススメできません。

 

著者の岩木一麻さんは、研究員として国立がん研究センターに勤務されていたことがあり、本作もノンフィクションとは思えない現実味のある内容となっています。 それだけに、治療中の方や経過観察中の方には刺激が強すぎると思うのです。 すでに寛解された方、あるいはがんと全く縁のない方なら医療サスペンスものとして楽しめるかと思います。

今や周りを見渡せば、がん患者だらけ。 とてもメジャーな病気なのですが、軽く受け答えはできないという厄介な病気。 早期発見であっても再発というリスクを抱え、じわじわと迫り来る「死」と向かい合っていかないといけません。 治療終了から概ね5年間の「経過観察中」は、「再発」のふた文字にビクビクしながら暮らしていかなければならないのです。 nokiaもこの5年の間は生きた心地がしませんでした。

そんな不安定な気持ちでいるときにこの作品は、とても重く感じられると思います。

ここからはネタバレになります。 申し訳ありませんが、自己責任でお願いします。

 

 

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この作品の冒頭に出てくる「健康食品でがんが消滅した!」というくだり、悪質な業者なら思いつきそうなことですね。 というか、実際にやっている業者がいるかもしれません。

私も経過観察になったときに家族からあれこれと勧められました。 でも、私は健康食品などに頼るのは好みません。 なんとなく胡散臭く感じるというか。 それ以前に高価な健康食品は財布がもたない、というのが本当のところなんですけど。

もしも、経過観察中にこの作品を読んでいたなら、こんな詐欺でがんが消えてなくなるのなら私も詐欺にあいたい、と思ったでしょう。

悪質な業者は、そんながん患者の心理につけ込んで、おそらく何の効用もない高価な食品を売りつけるのです。 けれど、詐欺なんかじゃがんは消えてなくなってはくれるはずがありません。 この作品の本題はここからです。

 

とある総合病院の健康診断がこの物語のポイント。 健康診断で早期のがんが発見された患者は、その病院で治療を受けます。 しかし、なぜか再発が多い。 そしてまた、なぜか再発のがんの寛解率が高い。 疑問を感じた生命保険会社の社員と、別病院に勤務するがんの専門医によってその謎は解明されていく。

ホントに簡単にいうとこんなストーリーです。

 

nokiaはがんサバイバーとなって15年になりますが、がんのこと何も知らなかったな、と感じました。 手術をしたのに再発したとしましょう。 実はこれって、術者の技量や術式によって左右されるのだそうです。 取りきられるはずのがん細胞が、術中になんらかのアクシデントにより体内に取り残された。 播種(はしゅ)というそうですが、腹腔鏡下における手術などで、切除した組織を体外に出すために切り刻んでから小さな穴から取り出す、そんなときに組織からこぼれ出たがん細胞が体内に残ってしまい、そのがん細胞が増殖して「再発」になってしまうのだとか。

ここだけ読むと、再発が人為的ミスのように見えますね。 この作品は、まさに「故意に」人為的にがんの再発をさせているというのです。 これ以上書くとホントにネタバラシになってしまうのでここでやめておきますね。

 

『がん消滅の罠 完全寛解の謎』は医療サスペンスものなので、医療系の専門用語がたくさん出てきます。 nokiaはがん経験者ということもあり、ある程度は理解できましたが、知識のない読者にはちょっと読みづらい内容かと思います。

そんな中で、いい仕事をしてる出演者((^ ^;;?)がいますので紹介しますね。 主演級のキャラクターは4人います。 夏目と羽島2人が医者、森川は生命保険会社の調査員。 この3人は放っておけば専門用語をバンバン操って先へ先へ物語を進めていってしまうところなんですが、夏目の婚約者・紗希がいい仕事をするんです。 紗希は雑誌の編集者。婚約者が医者であっても医療系の用語はよくわからない。 「ちょっと待って、それはどういうことなの?」 と時折みんなの会話をストップさせて説明を求めます。 彼らが紗希に対して説明するのを読んでいると、私たち一般人にもわかるように書いてあるんです。 紗希がいなかったらきっと、訳のわからん難しいだけの物語になっていて最後まで読めなかったかもしれませんね。

 

どんな物語でもそうですが、本筋だけだと最後まで読み通せないような気がします。 ちょっと寄り道があって初めて「さあ、本題に戻ろうか」と気分も新たに読み進められるのかな、と感じました。

この作品を読み始めたとき「ついに癌が医療ミステリーになったか…」と変な感想を持ちました。 医療系ミステリーといえば海堂尊さんですよね。 「チーム・バチスタの栄光」は心臓疾患をテーマに書かれています。 心臓疾患にしても、癌にしても、人の命を人為的に操るという行為、許されることではありません。

nokiaがほんわか小説が好きなのは、自身が癌サバイバーとして暗い気持ちを引きずって生きてきた反動かもしれませんね(^ ^;;)

 

今夜あなたは何を読みましたか?

ではまた〜

 

今日も読んでいただいてありがとうございました。