携帯は圏外。でも待つから。。。『クジラの彼』有川浩
『元気ですか? 浮上したら漁火がきれいだったので送ります。春はまだ遠いですが風邪などひかないように気をつけて。』
漁火の画像とともにこんなメールが送られてきたならあなたはどんな気分になりますか?
私に見せたくてこの写真を撮ってくれたんだな、って感動?
ああ、私って愛されてるな〜〜ってキュンキュンしちゃう?
冒頭のメールは「『クジラの彼』」の初っぱなに書かれています。
この中の「浮上したら」というセリフはこの物語のキモ。彼がどんなところから「浮上した」のか、物語を読み進めていくとわかりますよ。
本作は、有川浩自衛隊三部作のうちの一つ、『海の底』のスピンオフになってます。 「海の底」で活躍した彼らの恋物語。自衛官の恋物語ですね。 自衛隊の中でも困難を極めるという船乗りの恋愛事情が描かれています。
一度航海に出るとなかなか連絡が取れなくなるという船乗りさん。そんな船乗りの彼氏からの連絡をひたすら待ちわびる彼女。『待つ』恋はなかなかに厳しいものがあるんです。 「待つのを我慢したいから」という彼女さんの気持ちがあればこそ成就する恋もあるんですね。
こちらは短編集になっています。
・クジラの彼
・ロールアウト
・国防レンアイ
・有能な彼女
・脱柵エレジー
・ファイターパイロットの君
以上6編が収録されています。
このうち、「クジラの彼」「有能な彼女」「ファイターパイロットの君」は自衛隊三部作を読まれた方なら、「お〜!そうなりましたか!」っていう展開になってます。 彼ら、しっかりレンアイしてますよ〜
この作品たちを読んでいて感じるのは、自衛隊の方々の恋愛事情ってホントに過酷なんだな、ということ。 自衛隊に限らず商社勤務の方など転勤が当たり前の職業の方もいらっしゃいますが。。。 自衛隊となれば全国に何十何百とある駐屯地や基地へ飛ばされる。彼氏・彼女ができたのに転地がかかってあえなく沈没、なんてことがよくあるようです。 しかも、職業上、守秘義務というのがあり、家族でさえもいつ帰ってくるのか知らされない、という状況もあるようで。
ホント、「待つ方」の忍耐力があってこそ。 有事において自衛官が私たちを守ってくれる。 自衛官が心置き無く業務に就くことができるように家族の方の支えがある。 究極、有事において私たちは自衛官の家族の皆さんに守られている、と言っても過言ではないかもしれませんね。
ではまた。。
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